2015-01-17

Giving and Receiving -1 (Japanese Version)


(A) 山田さんは私の息子に本をあげました。 (誤)Yamada-san gave a book to my son.
(B) 山田さんは私の息子に本をくれました。 (正)Yamada-san gave a book to my son.

(A) は誤用です。言葉の響きとしてもかなり変なので、この誤用は避けたい。まずは、文法を正しく理解しましょう。ただし、授受表現はウチ(仲間:縁の濃い相手)とソト(縁の薄い相手)を区別して扱おうとする文化に根ざしているため、英語を第一言語とする学習者にとっては厄介かもしれません。

授受表現の文法を理解するためのキーポイントは「授受の方向」です。上の例文では、話し手にとって「息子」はウチの人間であり、「山田さん」はソトの人間です。ここで、ウチとは話し手との社会的距離が近い(縁が濃い)ことを表し、ソトとは話し手との社会的距離が遠い(縁が薄い)ことを表します。山田さんから息子へ本が渡ったのですから、授受の方向は「ソトからウチ」です。この方向を「内向き」と定義します。反対に、「ウチからソト」への授受に対しては「外向き」と定義します。

日本語では “to give” に対応する動詞は「あげる」と「くれる」の2つで、前者は外向きの授受に、後者は内向きの授受に使われます。上の例文は「内向き」の授受表現ですから、「くれる」が正しい動詞となります。

もう少し例を増やして練習してみましょう。

私は山田さんに本をあげました。 I gave a book to Yamada-san. 

私(話し手本人)はウチで、山田さんはソトです。授受の方向は「ウチからソト」ですから、使うべき動詞は「あげる」です。「外向き」は「あげる」です。

息子は山田さんに本をあげました。 My son gave a book to Yamada-san.

息子はウチ、山田さんはソト。授受の方向が外向きですから「あげる」。では、「私」と「息子」との間の授受の場合はどうなるでしょうか?

私は息子に本をあげました。 I gave a book to my son.

先ほど「息子」はウチと説明しましたが、私(話し手本人)との比較では「息子」はソトです。ですから授受の方向は「外向き」です。このようにウチとソトは相対的に判断されます。

授受の方向に対して動詞の選択を誤った例を下に示します。

山田さんは私に本をあげました。 (誤) 内向きなのに「あげる」を使用。
息子は私に本をあげました。 (誤) 内向きなのに「あげる」を使用。
山田さんは私の息子に本をあげました。 (誤) 内向きなのに「あげる」を使用。

正しい言いかたは以下の通りです。

山田さんは私に本をくれました。 (正) 
息子は私に本をくれました。 (正) 
山田さんは私の息子に本をくれました。 (正) 

命令形は、少し注意が必要です。外向きの場合は「あげなさい」を使い、内向きの場合は「ください」を使います。標準語では「くれなさい」という言いかたはしません。

太郎、その本を山田さんにあげなさい。 Taro, give the book to Yamada-san. 山田さん、その本を私にください。 Yamada-san, give me the book.

次に、ものを受け取るときの表現について説明します。英語の "to receive" に対応する動詞は「もらう」です。1つしかないので、「あげる」と「くれる」のような使い分けの問題はありません。

(C) 私はこの本を山田さんからもらった。 I received this book from Yamada-san.
(D) 山田さんはこの本を私からもらった。 Yamada-san received this book from me.

ただ、「もらう」という動詞はどちらかと言えば「内向き」です。ですから、(D) の文は誤用ではありませんが、文脈によっては違和感が出る場合があります。そのような場合は「受け取った」、「渡された」などと工夫することになります。なお、従属節に「もらう」を使う場合は上述のような問題は全くありません。

山田さんは私からこの本をもらったことを感謝しているようだ。 Yamada-san seems grateful to receive this book from me.


ウチとソトの関係が言葉の使い方に影響を与えるのは、ものの授受に限ったことではありません。話し手が何かの授受を意識していれば、そのことを表現することができます。

山田さんは私に英語を教えた。 Yamada-san taught me English. 

これはプレーンな言いかたです。「教える」という行為は知識の授受を含むので、そのことを意識した表現が存在します。「教えてあげる」や「教えてくれる」、「教えてもらう」がそれです。これら複合動詞によって示される「授受の方向」は、語尾の「あげる」、「くれる」、「もらう」によって決まります。これらを正しく使うことによって、例えば、話し手が持つ感謝の気持ちを表すことができます。

山田さんは私に英語を教えてくれた。 Yamada-san taught me English. 
私は山田さんから英語を教えてもらった。 I was taught English by Yamada-san. 

これら2つの文では、授受の方向はどちらも「内向き」です。内向きの動詞である「くれる」あるいは「もらう」が正しく使われているので、「私」が「山田さん」に感謝していることを言外に示しています。

ひろ子は私にセーターを編んでくれた。 Hiroko made me a sweater.
私はひろ子にセーターを編んでもらった。 I had Hiroko make me a sweater.
ひろ子はプレゼントを買ってくれた。 Hiroko bought me a present.
ひろ子は本当のことを話してくれた。 Hiroko told me the truth.

上記の例文はすべて、「私」が「ひろ子」に感謝していることを言外に含みます。このように、様々な動詞に「てくれる」、「てもらう」をつなげることで、内向きの授受を明示することができます。そして、内向きの授受を明示することは感謝の気持ちを表すことにつながります。では、外向きの授受を明示することはどのような効果があるのでしょう。

私は山田さんに英語を教えてあげた。 I taught Yamada-san English.

この文は「あげた」という複合動詞の語尾によって外向きの授受を明示しています。もちろん正しい使い方ではあるのですが、文脈によっては恩着せがましく聞こえるので注意が必要です。

最後に、複合動詞の命令形の使い方を示します。複合動詞においても「くれる」の命令形は「ください」です。

山田さん、私に英語を教えてください。 Yamada-san, please teach me English.
太郎、山田さんに英語を教えてあげなさい。 Taro, teach English to Yamada-san. 


ここまで、「外向き」、「内向き」という言葉を使ってきましたが、実は、「上向き」、「下向き」の方が言葉の意味にフィットします。「あげる」は「上げる」に通じますし、「くれる」は「暮れる(下に下がる)」に通じるからです。ソトを「上」に対応させることで、ソトに対する敬意を表しています。身近でない人に対して敬意を表するのは、無益な争いを避けるための知恵だと考えられます。


English Version
http://meadowlake001.blogspot.jp/2014/09/giving-and-receiving.html

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http://tinyurl.com/p94ujhz

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